千年の杢−木の質感を生かした角盆

角盆にも生きる挽物の仕上げ

角盆仕上げ作業角盆の磨きには手間をかける

当工房は、丸盆(ラウンドトレー)だけでなく角盆(スクエアトレー)も制作します。私の作る角盆は、板材を組み合わせるいわゆる指物でなく、一枚板からくり抜いたものです。加工法の分類からすれば刳物(くりもの)というべきかもしれませんが、電動機械を使う点で、挽物に近い側面もあります。

角盆はロクロでなくルーターと呼ばれる工作機械を使います。ルーターは比較的新しい機械ですから、伝統工芸というにはあたらないかもしれませんが、田中ロクロ工芸では挽物木地と並ぶ手仕事の作品として世に出しております。縁をきれいな丸みのある形に磨く作業は根気のいる手作業で、挽物木地同様丁寧な仕上げを心掛けています。

ロクロの場合は回転する材に刃物を当てますが、ルーターは刃物の方が回転しそれに材を当てて形を削り出します。ロクロよりも大変危険性の高い作業になります。この技術を使った盆としては、一文字(煎茶用)や瓢箪型や楕円の盆も制作しています。

工房は農家の納屋

工房外観工房外観。右奥はろくろ加工室

仕事場をみれば、その人の作風や人柄が分かるという人がいます。確かにそうかもしれません。しかし私は、やはり作品そのものをじっくり見て感じてほしいと思っています。私自身、全国各地を旅して伝統工芸を見てきましたが、その職人の仕事場をのぞいてみたいとは全然思わないのです。作品を手にとって観察すれば、その仕事ぶりは大体想像が付きます。素晴らしい作品に出合った時も「どうやって作ったのか」と考えを巡らす時間が、実は愉しいのです。職人や作家の技というのは、短時間仕事場を見ても分からないものでしょう。

私の工房は、田舎の農家のごく普通の納屋です。木くずやほこり、木の特有の匂いにまみれるため、きれい好きの人なら二度と入りたくないと思うかもしれません。そこに轆轤や大型轆轤、旋盤、鍛冶道具などがおいてあり、空いた場所には材料や木っ端が雑然と積まれています。

鉄工旋盤も2台ありますが、創業初期に安く導入できたのでそうしたまでで、旋盤には変わりありません。

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